DEAI NO EKI OKAZAKI ひと、まちストーリー

岡崎のひとの想いに触れるインタビュー。

いい店は、お客さまがずっと
笑っている。
岡崎駅の東西を、笑顔であふれ
させたい。

炭火焼鳥 鶴と熊 オーナー 
三浦 健志さんインタビュー

岡崎駅の東口に降り立つと、香ばしい匂いを運んでくる煙とともに、活気ある声が聞こえてくる場所があります。「炭火焼鳥 鶴と熊」。2012年に六名から移転してきて以来、駅前の顔として多くの人々の胃袋と心を満たしてきた名店です。 2026年3月、そんな「炭火焼鳥 鶴と熊」の新店舗が、岡崎駅の西口にも誕生します。なぜ、東口と西口の両方に店を構えるのか?オーナーの三浦さんにお話を伺ったところ、そこには、岡崎駅周辺エリアにかける熱い想いがありました。

「鶴と熊」──店名に込めた「願い」と「狙い」

一度耳にしたら忘れられない、インパクトのある店名。まるで昔話のタイトルのようでもあり、どこか懐かしさや愛嬌をも感じさせます。実は、この名前には三浦さんのある願いが込められています。
「店名の由来は『鶴の恩返し』なんです。今まで僕がお世話になった方々に、商売を通じて恩返しができるようなお店にしたい。ここでおめでたい商談がまとまったり、良き縁が生まれたり、お客さまにとって縁起の良い場所として使ってもらえたら──そんな願いを込めて、まずは『鶴』という文字を使いました。」

「鶴」と対になる動物といえば、まず連想するのは「亀」。なぜ「熊」だったのでしょうか。
「『鶴と亀』としてしまうと、どうしても和食屋さんのイメージを持たれてしまいますよね。そこで一文字変えることによって違和感をつくり、『ん? 何のお店だろう?』と人の記憶に留めてもらおうと考えたんです。でも、実は『熊』を選んだ一番の理由は、占いで画数が良かったからなんですけどね。(笑)」
照れ笑いを浮かべるそのお顔には、多くの人から愛される飾らない人柄が滲み出ています。

時代の先を読み、発展前夜の「岡崎駅前」へ

「組織の中にいるのではなく、自分の手でお客さまの顔が見える商売がしたい。」
そんな想いから、三浦さんが飲食の世界で独立を果たしたのは、空前の焼き鳥ブームの真っただ中の2003年。岡崎市六名に最初の「鶴と熊」を構えました。一番上に立つ人間が店全体を見渡せる店舗の規模感、そしてお客さまとの距離感を大切にするスタンスは、この頃から変わらない三浦さんの信念です。

六名の地で順調にファンを増やしていった三浦さんでしたが、ある出来事によって流れが大きく変わることになります。それは、飲酒運転に対する罰則の厳格化。ロードサイドにお店を構え、車で来店してもらうスタイルは今後難しくなる──そう直感した三浦さんは、2012年に現在の岡崎駅東口への移転を決断したのでした。
「これからは間違いなく『駅前』の時代が来ると思いました。ただ、当時の岡崎駅前は今とは全く違って、飲食店ビルもなければマンションも少ない、まだまだ静かな場所でした。東口の店舗も、最初はオーナーさんに『飲食店には貸さない。』と断られていたんです。それでも何度も足を運んで、『ここでやりたいんです!』と熱意を伝え続け、なんとか貸していただけることになりました。」
三浦さんの読みは見事に的中。その後、岡崎駅周辺は急速に発展し、「鶴と熊」はその変化を最前線で見守りながら、駅前の賑わいを牽引する存在となったのです。
長く愛される店だからこそ生まれる、温かな再会のドラマもあります。
取材の前日、六名時代からの常連のお客さまが、十数年ぶりに奥様を連れて来店されたそうです。「やっと来れたよ。」──奥様からのその一言が、三浦さんにとって何よりの喜びになったといいます。

西口店は“青い熊”のリベンジでもある

長くお店をやっていると、良いときも悪いときもあります。その中でも特に大きな試練となったのは、新型コロナウイルスの流行。当時、三浦さんは「鶴と熊」とは別に、岡崎駅西口で「BLUE BEAR(ブルーベア)」というカフェ&肉バル業態の店舗も手がけていましたが、パンデミックにより閉店を余儀なくされてしまいました。
しかし、三浦さんが歩みを止めることはありませんでした。ケータリング用に購入していたトラックをキッチンカーに改造し、スーパーマーケットの駐車場などで焼き鳥の移動販売を開始したのです。

「お店が開けなくても、お客さまに味を届けたい。」
その想いで焼き鳥を焼き続けていると、六名時代のお客さまや東口店舗の常連のお客さまがわざわざキッチンカーまで足を運んでくれ、「やっぱりここじゃないと。」と声をかけてくれることもあったといいます。自由にお店の営業ができずに先が見通せない中、お客さまからいただいたその言葉は、三浦さんにとって大きな励みとなりました。
その後、西口ロータリー付近にテイクアウト専門の店舗を構え、駅を行き交う人々に「鶴と熊」の味を提供し続けてきました。そして2026年3月、その店舗を移転・拡大する形で、西口に待望の新店舗をオープンすることになったのです。それは、単なる店舗拡大ではありません。志半ばで閉じた「BLUE BEAR」の想いを引き継ぐ、リベンジと進化の新章のスタートなのです。
「東口と西口の両方にお店を持つことで、『岡崎駅と言ったら鶴と熊だよね!』というイメージをより強めたいんです。東口のお店は焼酎や日本酒でワイワイ楽しむスタイルですが、2026年にオープンする西口の新店舗では、従来の焼き鳥に加え、BLUE BEAR時代の洋風メニューも取り入れます。」
西口店のコンセプトは「焼き鳥と洋食の融合」。ワインの種類を豊富に揃え、アヒージョやステーキといったバルメニューも提供。かつてBLUE BEARで好評だった、女子会コースや日付にちなんだイベントも復活させる予定だそうです。

可能性広がる岡崎駅エリアで、笑顔を積み重ねたい

三浦さんは、出会いの駅おかざきが主催する「駅ナカ横丁」にも出店されています。地域イベントへの積極的な参加もまた、街への恩返しのひとつなのかもしれません。 「やっぱり13〜14年やってきているので、名前を知ってくれている方が多くてありがたいですね。知名度が上がってきているのを肌で感じます。」と三浦さん。
長年この街で商売を続け、駅前の変化をつぶさに見てきた三浦さんは、岡崎駅周辺のポテンシャルを誰よりも信じてきました。かつて「BLUE BEAR」を出店した際は、少し早すぎたのかもしれません。しかし、今は違います。病院が開院し、住宅が増え、駅西小町のような新たなスポットも誕生しました。
「岡崎駅周辺は、まさに『これから』の場所です。街が新しくなり、人の流れも変わってきている。これからお店を始めるなら、可能性が広がるエリアだと思いますよ。」

インタビューの最後に、三浦さんが目指す「いい店」について伺いました。返ってきたのは、経営者としての鋭い視点と、店主としての温かい想いが同居する言葉でした。
「いい店とは、お客さんがずっと笑っているお店ですね。そして、価格以上の価値を提供すること。『え、これでこの値段でいいの?』と驚いていただけるような料理、時間と場所を提供したい。そうすれば、『安かったね、美味しかったね、良かったね!』と、お客さまはまた来てくれる。それを積み重ねて、笑顔であふれるお店にしていきたいです。」
「鶴の恩返し」から始まった物語は、今や「街への恩返し」へとそのスケールを広げています。東と西、二つの「鶴と熊」が灯す明かりは、これからも岡崎駅を行き交う人々の笑顔を照らし続けていくことでしょう。

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